簿記2級から入ってくる工業簿記。聞きなれない言葉とよくわからない状況に「難しい」「こんなの自分には無理だ」と感じる方もいるのではないでしょうか。
私はその一人でしたが、試験では工業簿記だけで38点取れていました。
ページを開いても目に入ってくるのは、原価計算・直接・間接・・・見たことのない言葉ばかりで勉強時間が苦痛でした。勉強を進めていくと実は工業簿記は商業簿記よりも得点をとりやすいことに気づきました。
工業簿記で得点をとれるようになる方法をご紹介します。
この記事を書いたのは…
この記事を書いているのは、第151回・合格率12.7%日商簿記2級に合格しました。
改定後、連結会計が初めて出された簿記検定の合格者なので、信頼性もあると思います。
執筆・マコの詳しいプロフィール
こちらが合格証明書です。賞状のような合格書は引越しの時に紛失してしまったので、再発行していただきました。
工業簿記が難しい3つの理由
簿記2級の初心者が工業簿記を難しいと感じるのは3つの理由があります。ひとつひとつ対処していくことで苦手意識を取り除いていきます。
1.暗記だけで解けないから
工業簿記は商業簿記とは異なり、暗記だけでは解けないので難しく感じてしまいます。
資料や問題文から質問の意図を読み取って、正しい解き方を使い解答を出すことが中心になるからです。工業簿記は仕訳よりも計算をしている時間が長くなります。
勘定科目自体は少ないのですが、単純に仕訳の暗記や法則の暗記だけでは解けないのが工業簿記です。
公式を覚えていてもどのようにどんな場面で使うのかが分からなければ解けません。
丸暗記で対処できないのは工業簿記が難しいと感じる理由です。
2.初めて聞く言葉
初めて聞く単語が多いので、問題文だけで難しく感じてしまいます。
工場での原価率や生産性を聞かれる問題が多いので、日常生活では使われることのない言葉が問題文にも勘定科目にも並びます。たとえば、「差異」だけでも操業度差異、不利差異、変動費能率差異…と細かく分かれています。
触れたことのない言葉や状況なので難しく感じますが、何度も出てくると慣れてきます。
工業簿記は全く新しい教科だと思って取り組んだ方が抵抗は少なくなります。
3.苦手意識をもっている
「工業簿記」=「難しい」という先入観で、気が付かないうちに苦手意識を持ってしまっている場合もあります。
「自分は文系だから…」と数字=理系という先入観を持っていることもありますが、簿記の分野では文系や理系は関係ありません。実際に使用するのは「足し算」「引き算」「割り算」「掛け算」の4つですし、計算機も使えます。
一番大事なのは、問題を解く経験と慣れです。
何度も同じパターンの問題を解いていくことで、抵抗がなくなっていきます。
実は商業簿記よりもやさしい工業簿記
工業簿記の方が商業簿記よりもやさしく、得点が取りやすいと言われる理由は3つあります。
新論点の追加されてない
工業簿記は過去10年以上新論点の追加がされていません。商業簿記は5年に1回程度改訂があり、新論点として簿記1級から降りてくるので試験の傾向が読みづらいのですが、工業簿記は過去問から出題の傾向をおさえられます。
SNS上で炎上するほど難しかった第151回の簿記2級試験でも工業簿記は見慣れた問題でした。
過去問が豊富にあるので今の範囲を徹底的におさえることで得点源になります。
パターン化されている
工業簿記は費目別・個別原価計算、部門別原価計算、総合原価計算、標準・直接原価計算の5つのパターンしかありません。
それぞれのパターンには解き方が決まっているので、問題文を見てどのパターンに当てはめるかが分かれば答えが出ます。解くための計算方法や図式が頭に浮かぶくらいまでパターンを覚えましょう。
公式を暗記する努力だけは必要ですが、パターンが限られているので商業簿記よりもやさしいと言えます。
範囲も狭い
工業簿記の出題範囲は商業簿記よりも狭く、教科書も商業簿記よりも薄いです。
商業簿記は3級で基礎を学んでいるので出題範囲も広く難しくなっています。実際の試験でも工業簿記の配点は100点中40点となっています。
範囲が狭い分覚えなくてはいけない量も少ないので、一度取得してしまえばやさしいと感じます。
どうしても理解できない
コツはわかっていてもどうしても理解できない時の対処法をご紹介します。
無理に理解しない
どうしても理解できない時には理解しないのも最終手段です。
工業簿記の流れや意味を理解できなくても試験本番で回答欄が埋められれば得点をとって合格することができます。実務では会計ソフトを使用しているので就職してから工業簿記の知識を求められることはほぼありません。
理解はできなくてもいいので、パターンを暗記しましょう。このパターンが出てきたらこの公式を使う、このグラフを書くというように5種類のパターンを暗記して機械的に解けるようにします。
工業簿記の仕組みや意味を完全に理解できなくても問題は解けます。
まずは1周進めてみる
テキストを見ながらでも答えを見ながらでもいいので、問題集を1周進めましょう。
10分間考えてみてわからなかったら、すっぱり諦めて答えを見ます。暗記するのではなく理解することが目的なので、解説書まで読み込みましょう。解説書の中で分からない言葉や公式が出てきたらテキストに戻って理解することを繰り返します。
工業簿記の中でもやさしい単元や相性がいい単元があります。
徐々にわかる問題を増やしていくと難しい問題にもとりかかりやすくなるので、まずは問題集を1周して全体像を把握しましょう。
諦めるのはとっても危険
どうしても理解できなくても諦めてしまうと合格の確率は半分以下に下がってしまいます。
簿記2級の合格ラインは70点なので、商業簿記で満点をとったとしても10点分は工業簿記でカバーしなくてはいけないからです。工業簿記は1問あたり4点から5点の配点が設定されています。合格点を獲得するには苦手な単元があると不利です。
工業簿記が得意になるほど合格が近づきます。
簿記2級に落ちた原因3つと受からない人の勉強方法【2回目で合格】
工業簿記のコツ
工業簿記を勉強するコツをご紹介します。
全体像をとらえる
全体像を把握することが1つ目のコツです。
工業簿記は日常生活では触れることがない分野なので、想像しにくいことが難しく感じる理由の一つです。そのため目の前の問題1つに集中していても全体像がつかめません。
工場の過程の中でどの内容を聞かれているかが分かると、想像しやすくなり図や絵が描けるようになります。また、試験本番では1問目から5問目まで問題が繋がっています。全体像を把握することで、最後の問題までスムーズにたどり着けるようになります。
商業簿記とは別物
商業簿記と工業簿記は全くの別物としてとらえたほうが理解しやすくなります。
商業簿記は会社の経理が中心なのに対して工業簿記は工場での会計や生産性・効率などを求める問題が中心になります。出てくる勘定科目や仕分けの方法は全く異なります。
たとえば、カレーの作り方とピザの作り方のように料理を作ることは共通しているけど、作り方や使う材料が全く違うようなものです。
2つに共通するの簿記2級野試験に出るということだけと割り切るのがコツです。
ひたすらアウトプット
手を動かして解ける問題数を増やすことが最も重要です。
工業簿記はインプット2:アウトプット8と言われているくらい自分の頭で考えて解くことが得点につながります。問題を見て、どの解き方を使うかがすぐに頭に浮かぶレベルまで時間を費やします。
解く過程を自分の中で説明できるように図や絵をかきながら解くと頭に入りやすいです。新しい問題に手を付けるよりも1つの問題を解説できるくらいまで理解を深めていきます。
わかりやすい問題集を選ぶ
工業簿記では読み進めやすい問題集やテキストを選ぶのがコツです。
工業簿記は言葉や計算式をいるだけで「難しい!」と感じて問題を解く手を止めるのを防げるからです。
わかりやすいテキスト
・図やイラストがある
・解き方の手順がていねい
・解答書に解説がついている
簿記2級の参考書は10冊以上でているので、書店でパラパラと立ち読みしてから選びます。ネットで購入する方は図やイラストが多いパブロフ君シリーズがおすすめです。ていねいな解き方の解説もあり、用語自体が難しいものもかみ砕いて説明してあるので難しさが軽くなります。
簿記2級の初心者が合格した勉強方法と独学おすすめテキスト
パブロフ君シリーズはアプリも出ているのでアプリと合わせて使うとさらに理解が深まります。
短期集中!
短期間は工業簿記に集中すると一気に理解できます。2週間は商業簿記の勉強は一旦休止して工業簿記に集中しましょう。1日3時間勉強するとして、3時間×14日=42時間勉強すると工業簿記が定着してきます。
工業簿記の進め方
①動画講義を見る、テキストを読む
②動画講義を視聴した単元の問題集を解く
1周目が終わると全体像がつかめるようなるので、2周目には解ける問題がちらほら出てきます。
工業簿記を勉強している間にすべて商業簿記を忘れてしまうことはありませんが、不安な時には商業簿記の仕分けを毎日1問だけ解くと安心です。
質問できる通信講座をえらぶ
講師に質問できる通信講座を選ぶのもコツです。
テキストを読んで理解するのが苦手な方は、ピンポイントで分からないところだけを教えてくれる環境を作ると挫折しにくくなります。人に相談すると
・どこが分からないのか
・どうやって解くのか
を一緒にひも解いてくれます。身近に簿記2級の合格者がいないときには通信講座の他にスクールに通う方法もあります。
質問できる通信講座は、やや高めに設定されていますが、家庭教師代だと考えるならむしろ安いです。
おすすめの通信講座
簿記2級で評判がいい通信講座をご紹介します。
【失敗しない簿記2級おすすめ講座厳選5選/費用と教材内容をコスパで比較】
クレアール
通信講座には珍しい担任制を採用しているクレアールです。質問回数は無制限なので、工業簿記で気になったことをその都度聞けるのが魅力です。
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クレアールの簿記2級は割引がすごい!胡散臭いと言われるワケと6つの口コミ
フォーサイト
毎年高い合格率が評判のフォーサイトの通信講座です。
回数制限はありますが質問することもできます。
フルカラーのテキストと動画講義が初心者にもわかりやすく作られているので、工業簿記の図の書き方も自然と覚えられます。私フォーサイトの通信講座を利用して、合格できました。
申し込みから発送までが早く、すぐに始められる点も高評価でした。
パッケージによっては教育給付金の対象なのでお得に受講できます。
【フォーサイトの簿記2級をおすすめする理由を合格者が7700文字で解説】
スタディング
圧倒的な安さが魅力の通信講座です。
安い理由はペーパーレス化や電子化、オンライン化で郵送費などをコストカットしているからなので、講座やテキストの品質には全く問題ありません。
・動画講義
・テキスト
・問題集
テキストへの書き込みも電子媒体になることが唯一の欠点です。
全てがスマホからみられるので、カフェや図書館など場所を選ばずいつでも、どこでも勉強できます。
スタディングの簿記2級の口コミをリサーチした結果【コスパ最高】
工業簿記が難しい理由と対処法のまとめ
工業簿記が難しい3つの理由は
・暗記だけで解けない
・初めて聞く言葉が多い
・そもそも苦手意識を持っている
実は商業簿記よりも工業簿記はやさしい
工業簿記は新論点も追加されていないし、パターン化されている
どうしても理解できない時の対処法は
・無理に理解しない
・分からなくても1周進める
工業簿記のコツは全体像をとらえることとアウトプットすること
分かりやすいテキストや質問できる通信講座を選ぶと克服できる